大腸がんは年々増えていますし、女性ではがんの死因の第1位となっています。初期の段階では症状がほとんどありませんし、怖い病気であることは確かです。
では大腸がんは治らない病気でしょうか。いえいえ、そんなことはありません。発見できた時にどの段階だったかにもよりますが、私は十分に治る可能性のある病気だと思っています。
その証拠に、私の父は80歳を超えて大腸がんがみつかりましたが、手術を経て無事治りました。
もちろん全ての方にそれぞれ異なる病状がありますし、年齢や体力や体質があります。父の話はあくまでひとつの例ですが、大腸がんは治る病気だと思いました。
医学的な細かいことはわかりませんが、家族として父を見てきたことを書いてみたいと思います。少し重い話になりますが、おつきあいください。
父が大腸がんとわかるまで
もう15年近く前になります。父は83歳、母が80歳だったと思います。
広島市郊外の家に二人暮らしで、私は車で40分ほどの市内中心部のマンションに暮らしていました。毎週末には実家に行っていましたが、両親の様子を細かく見てはいませんでした。
そんなある日・・・
母から、父の排便が少し変だというのを聞きました。
ここしばらく便秘と下痢が繰り返されているとのこと・・・。
嫌な予感がしました。実はその2年前に、姉が大腸がんで亡くなっていました。
私はそれ以来、こと大腸がんに関してはすごく気にして、自分でも内視鏡検査を受けましたし、いろいろ情報も入れていました。便秘と下痢が繰り返されるのは大腸がんの症状としては典型的なもののひとつです(もちろん、そうい症状があるからといって大腸がんと決まったわけではありませんが)。
すぐに実家に行った私は、父に検査を強く勧めました。母も大変心配していました。(父はそれまで大腸の検査は一度も受けていませんでした)
大腸がん検査、そして入院へ
初めての大腸内視鏡検査
この地域でいちばん大きな総合病院で大腸内視鏡検査を受けました。ところが途中で内視鏡が奥に進まないほどの状態で・・・別な検査をしたところ、結腸に大きながんが発見されました。
腸閉塞を起こしかけていて、すぐ手術をしないと危険な状態でした。
もちろんすぐに手術の手配となりました。
そんな状態でしたが、父の場合、ラッキーだったことが二つありました。
その一つは、かなり大きながんだったにも関わらず、腸壁を破って外に出ていなかったこと。腸の外にがんが出てしまったり、播種といいますががん細胞が体にばらまかれてしまうとかなり危険な状態になります。姉の場合は検査をした時にはすでにその状態だったようでした・・。
そしてもう一つとても良い先生に巡り合えたことです。
手術を受ける
手術当日・・ やや記憶が薄いのですが、手術は3時間くらいかかったように思います。
待つ時間が本当に長く、やっと終わって「成功しましたよ」と先生に言われた時は本当にホッとしました。父もさぞ大変だったと思います。
取り出したがんを見せてもらいましたが、25cm、いや30cmはあろうかと思われる、本当に異様な物体でした。心底ぞっとしました・・。
術後のケア
父はその後1か月くらい入院しました。
途中、手術の影響で喉に浮腫(腫れ)が起こりました。気管が圧迫されて危険だということで、喉に穴を開けてそこから呼吸をする手術を受けました。入院生活そのものには影響ありませんが、喉に穴を開けたことで言葉がしゃべられず、2週間くらいだったか筆談生活を送りました。父もしんどかったと思います。
手術をした腸は順調に回復していたようですが、腸が完全に回復するまで人工肛門を使うことになりました。(後述しますが後にとれました)
退院〜そして自宅での日々
不慣れな人工肛門での生活
退院後は家で普通に暮らしていました。腸を整える薬はもらっていたかもしれませんが、抗がん剤のようなものは服用しなかったと思います。
ただ、人工肛門になったことが父にはかなり大変だったようです。人工肛門は、ご存じの方も多いと思いますが、腸の一部をお腹に直接出し、そこにボタンのようなものをつけて取り付けたビニール袋に排泄するというものです。
袋は専用のクリップでぴったり留めますので、臭いや便が漏れたりということは通常ありません。ただ、クリップがきちんと留まってなかったり、交換する時に失敗してしまうことは、特に慣れていないうちは、あります。
父は高齢で手先も細かく動かせなかったでしょうし、古いタイプの人ですからそういう体になったショックもあったと思います。寝ている時やその他で何度か失敗をした時には、相当にめげていてかわいそうになりました。
そばでは母が直接サポートし、必要な品の購入、病院とのやりとりその他では私がサポートしました。
そんな父にありがたかったことは人工肛門を元に戻す手術が受けられるということでした。
人工肛門をはずし、元に戻す手術を受ける
肛門には排便に欠かせない肛門括約筋があります。がんが肛門の近くにできた場合は残念ながら括約筋も含めて切除しますから、そういうがん手術の後は、残念ですが、生涯人工肛門ということになります。
父の場合、たまたまがんができた場所が肛門から離れていたために、括約筋を取ることがなく、希望すれば人工肛門を取って元に戻すことができました。
もちろんそれもまた手術になるわけで、もう一度大変な思いをするわけですが、父はそれでも元の方がいいと言い、復元手術を受けました。人工肛門にしていた期間は4か月くらいだったかと思います。
そして無事手術が成功、もとのお腹に戻りました。
その後の父は・・
父はその後5年ほど自宅で普通に暮らして、88歳で亡くなりました。
その後、大腸がんは再発しませんでした。亡くなったのは病気ですが別の病気です。
手術後、内視鏡検査はしなかったので、もしかして大腸がんが再発していた可能性は否定できませんが、少なくとも父が大腸の病気で苦しむことはありませんでした。
私は父の大腸がんはきれいに治ったと、今でも信じています。
まとめ/家族として私が思ったこと
私が父の闘病を通じて思ったのは、大腸がんは治る病気だということです。
大腸がんはもちろん怖い病気です。姉を大腸がんで亡くした私は、そのこともわかっているつもりです。
治療方法は発見された時の状況によって大きく変わります。手術が向いていなかったり、抗がん剤を使用したり、治療に時間がかかったり、いろいろあると思います。
父にとても大きな大腸がんができていたにもかかわらず、手術が有効な状態だったのは、ひと言で言えばラッキーだったのだと思います。でも、医療は日進月歩、いろいろな治療法が日々進化しています。どんな状態であったとしても決してあきらめることはありません。
人工肛門にしても、肛門括約筋が残っていれば父のように手術できちんと元に戻ります。仮に生涯人工肛門となったとしても、大勢の方が普通に暮らしていらっしゃいます。
素晴らしい先生に執刀していただいたのも大きかったと思います。これは運もあるかもしれませんが、もし担当の医師に不安や疑問があったら、とことん質問するなり、場合によっては病院を変えるということも考えてもいいのかもしれません。
もしあなたやあなたの大事な人が大腸がんの危険にあったら、落ち着いて、しっかり病院で相談されて、どうか早い治療をなさってください!
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