広島の夏の風物詩・灯籠(とうろう)流し|その意味と体験して思ったこと

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灯籠流しメイン

今では広島の夏の風物詩とも言われる「灯籠(とうろう)流し」

正直なかなか行く機会がなかったのですが、4年前・2019年の夏、フランス人の友人が日本に旅行にきて、広島で会ったのがちょうど灯籠流しの日だったもので、一緒に行ってきました。彼も私も灯籠を買い、祈りを書いて流しました。

少し前の話になりますがその時のことを思い出しつつ、広島の灯籠流しについてあらためてその意味や歴史を調べ、私なりに少し考えてみたいと思います。

(記事後半でその時撮影した動画も掲載しますので、よろしければご覧ください)

目次

広島の灯籠流しの時間や場所は?

広島の灯籠流しですが、毎年8月6日の夜に、平和記念公園の中央を流れる「元安川(もとやすがわ)」で行われます。

路面電車で広島駅から約15分、「原爆ドーム前」で下車して、原爆ドームを左手に歩いて5分くらい、この川にかかる「元安橋」の近くが会場となっています。

また、同じ日に新己斐橋の西詰(己斐地区)と東詰(福島地区)でも行われます。

灯籠流しの会場マップ

ちなみに元安橋を渡って少し南に行ったところに、朝、平和祈念式典が行われる原爆死没者慰霊碑があります。

8月6日の朝に行われる平和祈念式典には毎年のように行っていた私ですが、夜の灯籠流しは正直あまり行くことがありませんでした。
フランス人の彼と会って「じゃ行ってみようよ」ということになったのも良い機会だったと思います。

広島の灯籠流しの意味。一般的なものとどう違う?

灯籠流しは、亡くなった人の魂を弔う気持ちで行われるもので、元々昔から行われていた「送り火」という「亡くなった方の魂を火で弔うこと」から変化してきたものと言われています。

ですから灯籠流しはもちろん広島だけのものではないですし、今も日本各地あちこちで行われています。

ただ、日本各地でのそれは、8月のお盆(旧盆)に行われるのがほとんどではないでしょうか。

お盆にご先祖様の御霊が戻って来られるので、お帰りの時に灯籠に火をともし、川に流して弔うというのは、日本人的でよくわかります。

広島の灯籠流しにもベースとしてそういう意味合いはあると思います。ですが広島のそれが大きく違うのは、やはり1945年(昭和20年)8月6日の原子爆弾投下があったことです。

朝8時15分、激しい閃光と衝撃のもと、一瞬にして広島市は壊滅。現在の平和公園のあたりを中心に地獄絵図と変わりました。

灯籠流しが行われる元安川も、今は心和む美しい川ですが、その時は水を求める人々が多数入って息絶えた場所でした。

本当に美しい平和公園であり元安川ですが、やはりかつてここで起きた凄まじい出来事を想像し重ねてしまいます。

もちろん私は実際に見たわけでは無いのですが、「ここで」「何の罪のないあまりにも多くの人が」と思うと、本当になんとも言えない複雑な思いになりますし、慰霊碑にある「過ちは繰り返しませんから」の思いを胸に強くします。

島での灯籠流しは、原爆で亡くなった方々への思いと、今平和に生かされているありがたさを感じつつ、今後も私たちが平和を続けることを誓い、8月6日に行われるものと認識しています。

原爆ドーム
原爆ドーム

栃木市が出されている文章から少し引用させていただきます。

色とりどりの灯籠が流される、優雅な川の景色からは想像がつかないくらい、悲惨で残酷な光景だったに違いありません。
この日も、多くの人が灯籠を流していました。灯籠の数だけ、被爆して亡くなられた方々の魂を供養しているんだと思うと、改めて平和の大切さを考えさせられました。

引用:栃木市の資料 D班「元安川灯籠流しの体験について」

元安川を流れる灯籠はとてもきれいでした。でも 70 年前の 8 月 6 日にはこの川で灯籠と同じくらいたくさんの人が流されていたのだと思うと、とても複雑な思いになりました。
灯籠流しには、原子爆弾で亡くなったたくさんの人たちへのそれぞれの思い、そして平和を願う気持ちがこめられているのだと感じます。

引用:栃木市の資料 D班「元安川灯籠流しの体験について」

ほんとにそのとおりですね・・・。

そしてこれは広島市の公式サイトの「よくある質問と回答」から引用させていただきますが

「とうろう流し」は、戦後まもなく、原爆で命を落とした人々の遺族らの手作りで始まったのが由来です。
夕刻から元安川に漂う幻想的な灯かりは、被爆者の霊を慰めるとともに、今を生きる人々の平和への願いをあらためて強くさせています。

引用:とうろう流しについて知りたい。(FAQID-3113~3116)

もともとは広島の灯籠流しは、原爆で亡くなった身内の方を慰霊するために遺族の方がすることが多かったようですね。

今まさにウクライナとロシアの戦争が起きてしまっていますが、本当に一日も早く終わってほしいですし、私たちの下でそういうことが二度とないようにと祈らずにはいられません。

原爆慰霊碑
原爆死没者慰霊碑と献花

現在の広島の灯籠流し

そんな歴史と意味合いのある広島の灯籠流しですが、現在は広島の中振連(広島市中央部商店街振興組合連合会/広島の中心街区に位置する10の商店街と9つの大型店で組織された連合会)が運営されています。

広島ならではの意味、昭和20年8月6日の歴史を踏まえた上で、平和を祈りつつ、広島の夏の風物詩の一つとしても市民に親しまれています。

個人的なことを少し・・・

こういう流れで個人的なことを書くのもどうか、とは思うのですが、少しだけ自分のことを書きたいと思います。

私は戦後だいぶ経ってからの生まれですが、当時の母は広島市内の「横川駅」に勤めており、前日まで普通に通勤していたそうです。

たまたま8月6日、体調を崩して実家にいた母は奇跡的に助かりました。

横川駅もその周辺でも多くの方が亡くなったそうです。もし母が通常通り勤務に行っていたら命がなかった可能性が高く、そうしたら私もこうして存在していないわけです。

そう思うと、自分が今あることと原爆や戦争を切り離しては考えられません・・。

平和の灯し火
平和の灯火
平和の子の像
平和の子の像

広島の灯籠流しの体験談(2019年8月6日)

冒頭に書きましたが、2019年の当日、フランス人の友人と共に、灯籠流しに参加しました。ここからはその体験談を書きます。

運営など

灯籠流しは、今は正式名称として『ピースメッセージとうろう流し』と言っています。

主催は『とうろう流し実行委員会』というところだそうですが、先ほど書いた「中振連」がベースになって運営されています。

中振連の公式サイト

灯籠のことや参加料など

灯篭は、保存された千羽鶴を溶かして作った再生紙や、盆灯籠に使う紙で作られたものを購入することになっています。これは、公園内にテントが設置されていてそこで販売しています。1つ600円でした。

時間ですが、午後6時頃から10時頃までです。ですが受付の方は、灯籠の紙が全部無くなったら終了ですと言っておられました。
その時間まではいなかったのですが何時頃までされていたのでしょうね・・。

この時期の広島は午後7時半くらいまでまだ少し明るいので、暗くなる午後8時以降くらいの方が綺麗です。

ちなみにこちらは一度午後6時40分頃に行った時の風景。
すでに灯籠流しが始まっていますが、明るいのでちょっと雰囲気がイマイチですね。

明るい時の灯籠流し2

そこで私たちは一度平和公園を離れ、近くの喫茶店で時間を潰してから改めて7時半頃会場に戻りました。

こちらは私たちが流した午後8時半ごろに撮影した動画です。
公園の周りの照明が少し眩しいですが、すっかり暗くなって、灯籠の火と川面がとても綺麗です。

先ほども書きましたが、元々は原爆で亡くなった身内の方を慰霊するために遺族の方がすることが多かったようですが、時が過ぎ、そういう意味よりは、世界の平和を祈るとか戦争がなくなるようにとか、そういう思いで参加する方が増えているように感じます。

ですがそれはそれで、広く世界の平和を祈るという意味合いでも良いと私は思います。

フランス人の友人もきっとそんな思いで灯籠を流してくれたと思います。

この日に合わせて海外から広島を訪問する方がとても多いのですが、そんな外国人の中にも、一緒に流してくれる方がいらっしゃいました。

灯籠を買い、流すまでの段取り

ご存知ない方のために、実際に灯籠流しをするまでの段取りをお伝えします。

当日の受付は現地にテントができていてそこで行われます。(私たちが行った時もかなり並んでいて、列を作ってだいぶ待ちましたが・・)

STEP
灯籠の紙を購入する

受付にて紙を購入します。600円です。

STEP
メッセージを書く

受付裏のスペースに、テーブルと太いサインペンが用意されているので、そこで灯籠に祈りや願い事を書きます。

STEP
流す列に並ぶ

今回改めて驚きましたが、灯籠流しをされる人は本当に多いです。
順番待ちの人たちがびっくりするくらい距離、延々と列をなしていて、私たちもその最後尾に着きました。
実際流す場所に行くまでは50分くらい待ちました。

STEP
階段を河川敷に降りて、灯籠の芯(台)を入れてもらい、火を点けてもらう

それまで手に持っているのは紙だけです。どこで灯籠の形になるのかと思っていましたが、河川敷に降りたところで担当の方が、木の台座の四隅に棒を立てたものを一つずつくれます。

それに紙をセットし、ロウソクもそこでもらい、火も点けてもらいます。
この辺の一連のことは担当の方が何人もいらっしゃるし、非常にスムーズです。

STEP
流す

あとは流すだけですが、川のへりは岩場で足元が悪いですし、暗いし、とても危険です。
水面が低いので、自分で流すのはちょっと無理です。

2、3人の男性スタッフが川の中に入って、流してくれるので、その人にお任せするのが良いです。私も友人もそうしました。

灯籠が流れるのを目で追いつつ、しばし祈りを捧げ、移動します。

流す人に注意してもらいたいこと

まずは早めに紙を買っておくこと、そしてものすごく並びますのでその覚悟をしておくこと。
特に暗くなった後の川べりは非常に足元が悪く危険なので十分注意して歩くこと。
流すのは担当の人に任せること。

あと、祈りを捧げ、しばし流れる灯籠を目で追うのはいいのですが、後から後から人が来ますから、ある程度で速やかに移動しないと迷惑になりますので注意してください

見物する人に注意してもらいたいこと

川の両岸や元安橋の上からの景色はとても綺麗で、見物する人も大変多いです。
立ち止まって見ている人も多いですが普通に歩いている人もいますから、人とぶつかったりすることには十分気をつけてください。

そして、見ていて美しいですが本来慰霊のための行事ですから、単なる観光気分よりは祈りを捧げる気持ちで見ていただきたいと思います。

流した後の灯籠はどうなるの?

環境汚染の問題もいろいろ問題になる今、流した灯籠がどうなるかが気になったりします。

調べましたが、行事が終了してからNPO法人の方などが回収船を出して回収されるそうですね。ご苦労様です。

また、この日以外に、学校や各種団体が、担当部局の許可を受けた上で灯籠流しをすることもできるそうですが、その際はその学校や各種団体が自主回収することが義務付けられています。

許可申請は:『国土交通省中国地方整備局太田川河川事務所己斐出張所(TEL:082-271-1418)』まで
NPO法人雁木組⇒こちら

最後に

灯篭に文字を書いた

フランス人の友人は「夢」「amitié depuis la France(フランスからの友情)」と書き、私はベタですが「世界が平和になりますように」と書きました。

火をつける人

隣にいた小さい男の子が「何を書いたらいいの?」と若いお母さんに聞いていて、「あなたが思うことなんでもいいのよ」と言われていましたが、特に子供たちはそれでいいと思いますね。

そんな中から、人とともにあること、人と仲良くすることを感じてくれたらいいなと思います。

今年もあと2週間で、原爆忌・灯籠流しがやってきます。

平和公園は78年前に悲しいことのあった場所ですが、今、平和の尊さや世界の人たちと仲良くなれる喜びを感じられる場所でもあります。

あなたも良かったらぜひ一度いらっしゃってください。


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